大腿骨近位端骨折
- 2022年9月28日
- 大腿骨近位端骨折
皆さんこんにちは。
大腿骨近位部骨折は勤務医時代にたくさんの症例を経験してきました。
この骨折での注意点や特徴、問題点などを書いていきたいと思います。
~どうなるの?~
転倒や転落などでこけたときに太ももの付け根が痛くなります。基本的には立つことができなくなり、足を動かすと激痛が走ります。ただし、ずれの少ない骨折(ヒビ)の時はつかまり立ち程度ならできることがあります。この骨折は高齢者に多く、認知症を持っている人では発見が遅れることがあります。
~なんでなるの?~
転んだり、ベットなどから転落したりしてお尻をぶつけることで起こります。
多くは骨粗鬆症があり、若い人に起こるときは交通事故などによる強い衝撃が加わったときです。骨がもろくなっているために若い人では折れないような衝撃でも折れてしまいます。股関節の近くで骨折し、関節の中と外で折れ方が変わります。
~どうなるの?~
太い骨の骨折なので折れたところから出血します。この出血は折れた直後よりも次の日ぐらいがピークに貧血が進みます。また、足が動かなくなるので折れた足の血の巡りが悪くなり、血管に血の塊である血栓ができることがあります。食欲が落ち、寝返りするのも痛みが強いですので床ずれができたり、肺炎などの炎症が内臓に起こることがあります。
このように骨折の問題だけでなく、全身に影響を及ぼすことがあります。
~どんな検査をするの?~
レントゲンをとると骨折がわかります。しかしながら、ずれのない骨折ではわからないことがありますのでMRIをとって診断することがあります。骨折の原因が腫瘍やほかの病気が潜んでいることがありますので、レントゲンで骨折のしかたが通常と違うときにもMRIを取ることがあります。手術の方法を判断するためにはCT検査を行います。MRIでは骨折があるかないかはよくわかり、CTでは骨の折れ方がよくわかります。
~どうしたらいいの?~
治療方法は手術をまず考えます。折れたままだと全身状態に悪影響を及ぼすことが多く、寝たきりの原因になりますのでなるべく早く手術を行います。そして、できるだけ早くリハビリを始めることが寝たきりを防ぐ方法になります。
関節の中の骨折では骨をねじで止める手術と人工の関節に変える方法があります。ずれが大きいと骨頭の血流が壊死しており、骨をつないでもつぶれてしまうので骨折のタイプで手術方法を選択します。
関節の外で折れている場合は骨を専用の金属で固定します。
この骨折で一番問題になるのは元の生活に戻ることができないことが多いことです。その理由は認知症の進行や歩行能力の低下があります。今まで階段が昇れていたのに2階まで上がれなくなったり、認知症が進んだため一人暮らしができなくなったりして退院先が決まらないことがあります。
家族の理解や手助けが非常に重要になる骨折です。
当院では介護保険を利用した通所リハビリがありますので退院後のリハビリや生活をどうすればよいのか悩みを解決できるようにお話を聞かせて頂きますので、困ったことがあれば遠慮なく相談してください。それではまた来週。