ボトックス治療
- 2023年2月1日
- ボトックス治療
皆さんはボトックスって聞いたことありますか。
ボトックスは以前から美容業界においてシワを取ったり、リフトアップなどに使われておりました。これらは自費診療なので高額になります。しかしながら、医療保険が適応される疾患もあります。顔面のけいれんや脳卒中後の痙縮、原発性腋窩多汗症、斜視、過活動膀胱などでは特別な資格を有する医師により保険適応として使用されます。
私は脳卒中後の痙縮・原発性腋窩多汗症に対するボトックス治療の資格を有していますのでこれらの使用方法や効果、注意点について書いてみたいと思います。
~ボトックスって何~
ボトックスとはボツリヌス菌から作られる毒素です。ボツリヌス菌とは食中毒を起こすことのある菌なので、怖いイメージがあるかもしれません。この毒素は筋肉を麻痺させてしまいますので、誤って食べ物に含まれていたりすると全身の筋肉が麻痺してしまいます。そのため、ボトックスを扱うにはそのための講習を受けて、試験に合格する必要があります。
また、疾患によって講習が分かれていますのでそれぞれの疾患で講習を受ける必要があります。
ボトックスは筋肉を麻痺させると書きましたが、麻痺させるとゆうことは力が入りすぎている筋肉を緩めることができます。
この作用をうまく利用しているのが、脳卒中後の痙縮に対するボトックス治療になります。
~脳卒中でのボトックス治療~
脳卒中後の後遺症として痙縮があります。
筋肉は脳からの指令で動いていますが、脳梗塞や脳出血などでは脳からの指令がうまく筋肉に伝わらなくなります。力が入らなくなったり、逆に力が入りすぎて曲がってしまったりします。
この力が入りすぎている状態を痙縮といいます。
手首や肘が曲がってしまい伸ばせない・膝が伸びずに、足首が動かなくなって歩けないといった症状に対してボトックス治療が有効になります。
ボトックスには筋肉を麻痺させる効果がありますので、必要以上に力が入ってしまっている場所に注射を打つことで力が抜けて動かせるようになります。
ただ、注射するだけでは効果的ではないので注射後にリハビリテーションを行い、動かせるようにしていきます。
~使用方法と注意点~
まずはどの部位に注射をするか決めます。例えば腕に打つとしてもどの筋肉に力が入りすぎているのかはここによって異なります。緊張している筋肉を見極めて、必要最小限の量を投与します。効果は数日で現れ、通常は3~4か月持続します。その後、徐々に効果が薄れてしまいますので3~4か月おきに注射が必要になります。
注射をした後には必ずリハビリテーションを行います。
筋肉や関節は動かさなければ動くようになりません。効果は個人差が大きいのですが、リハビリテーションをしっかり行うことで差が出てくる部分もあります。
また、筋肉だけの問題ではなく、関節まで固まってしまっている場合は効果があまり感じられないこともあります。治療前の診察やリハビリ評価を行い、しっかり理解して頂いてから治療開始する形になります。
副作用としてはめまいや吐き気が報告されていますが、一時的なもので長引くことはありません。怖いものとしてはアナフィラキシーショックがあります。これはすべての薬剤やワクチンでも同様に起こりえる副作用です。確率はかなり低いものになりますが、アレルギー体質な人などは注意が必要です。当院では対策としてアレルギーが起こった場合の薬を常備しております。
当院でのボトックス治療としては脳卒中後の痙縮ともう一つ原発性腋窩多汗症の治療も可能です。今回のブログで一緒に書こうと思っていたのですが、脳卒中での内容が長くなったので次回にしたいと思います。
脳卒中でのボトックス治療は学会が推奨するガイドラインでもグレードAとされ、効果が証明されている治療方法です。また、費用に関しては身体障害者手帳の有無や様々な助成制度を利用できる場合があるので診察時に相談してください。
それではまた来週。