パラスポーツ
障害者のイメージとしては介護や手助けが必要と考えがちですが、スポーツを楽しみ、日常に取り入れておられる方々がたくさんいます。
交通事故などで首を損傷すると脊髄損傷を起こし手足が動かなくなり、車いすが必要となります。そのほかにも、生まれつきの障害や病気によるものなど様々な理由で一般的なルールでスポーツが行えない患者様がおられます。
今回はパラスポーツの基礎知識と脊髄損傷におけるスポーツ参加のための関りについて考えます。
~はじめに~
平成23年に成立したスポーツ基本法ではスポーツを「人類の文化である」と定め、人種や性別・年齢によらず、すべての国民にスポーツの権利が保障されています。障碍者スポーツは今やリハビリテーションの枠を超え、総合的に誰にでもするスポーツとゆう意味で、パラスポーツ(すべてを包括したスポーツの意味)へと変わりつつあります。
~パラスポーツ~
第二次世界大戦後、脊髄損傷者にリハビリテーションの一環としてスポーツが導入されました。日本では1960年代から障碍者の社会参加促進と国民に対する理解のために車いすマラソンが導入されました。障碍者スポーツはその障害特性に合わせて一般的なスポーツのルールを一部変更したり、用具などの使用を認め、スポーツを安全に行えるように工夫しています。例えば、車いすテニスではツーバウンドまで返球可能としたり、陸上競技では義足や車いすで走るようにしています。
障害がある場合、スポーツに参加することによって障害が悪化するのではないかと心配されるかもしれませんが、そのようのことはありません。メディカルチェックを行いながら安全にスポーツができる環境が整いつつあります。
~スポーツの効果~
運動やスポーツが健康に良いことは以前よりいわれてきました。金連、健常者では運動をすることにより筋肉よりインターロイキン6などのサイトカインが放出され、このサイトカインの上昇により糖尿病の改善や平均血圧の低下、高脂血症の改善などの多くの効果がもたらされることが証明されてきました。脊髄損傷者でも同様に運動により血中サイトカイン濃度が上昇することが判明しています。
また、これら脊髄損傷者でのスポーツを行うことにより心肺機能を高め維持したり、免疫機能を高めたり、脳由来神経栄養因子を増加させたりと、健常者と同じような応答がみられています。脊髄損傷者で車いすマラソン元世界記録保持者のハインツフライ選手は「健常者はスポーツをしたほうがよいが、障碍者はスポーツをしなければならない」との言葉を残しています。
~注意点~
まず、脊髄障害者がスポーツを楽しむためには、メディカルチェックだけでなく、日常生活での注意点がいくつかあります。運動機能障害だけでなく感覚障害にも注意が必要です。例えば、車いす座位により褥瘡などが短時間で発生することがあります。1時間に数回はプッシュアップをするなどして除圧に努める必要があります。必ず目で見ることや触るなどして確認が重要です。
また、頚髄損傷者では自律神経機能障害により体温コントロールが難しくなります。発汗が減少しスポーツ時に体温が高くなる傾向があります。体温に注意し、室温や外気温・風の有無などの確認が必要となります。
また、自律神経過反射とゆう異常な高血圧に注意する必要があります。
異常高血圧は脳出血などの生命にかかわる危険性を高めます。異常高血圧になると頭痛・顔面紅潮・発汗・鼻づまり・徐脈などが起こります。
自律神経過反射は暴行内の多量尿貯留や麻痺部への刺激が伴ったときに起こります。まずは原因を診断し、尿を排泄するなどの原因を取り除かなくてはなりません。
競技には特性があり、二次的な障害にも注意が必要です。車いす競技では肩や肘・手などに負担がかかりやすくなります。メディカルチェックや検診などが重要となり、整形外科のかかりつけ医を持っておくことがよいと思います。
当院でも車いす利用者が増えてきました。障害とうまく付き合いながらスポーツを楽しめる人生が送れるようにお手伝いできればと思います。
それではまた来週。