ドミノ骨折
- 2022年10月26日
- ドミノ骨折
今回は骨折の連鎖です。
骨粗鬆症の状態では一か所が折れるとそれに伴い、何度も骨折が発生することがあります。骨がもろいことに加えて筋力の低下や姿勢の悪化などが起こることで連鎖してしまいます。この骨折の連鎖を最近はドミノ骨折と呼ばれます。ドミノ倒しのように連鎖してしまう骨折、できることが少なくなり、意欲が低下し寿命まで短くなってしまいます。
こうならないようにどうすればよいのか解説していきます。
~症状~
骨粗鬆症による脆弱性骨折は軽微な外力が原因で発生する骨折で、主なものに背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)、脚の付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)、肩の付け根の骨折(上腕骨近位端骨折)があります。時に脊椎の圧迫骨折や大腿骨近位部骨折は立つ動作や体を支える部分の骨折であるため、高齢者の日常生活動作を傷害して生活の質を低下させる代表的な骨折です。立った高さからの転倒程度の軽微な外力で骨折きたすので、脆弱性骨折を起こした患者さんには全身的な骨折の脆弱性が基盤にあります。このため、脆弱性骨折はそれ自体が骨折のリスクを高め、ひいては骨折が次の骨折につながる「脆弱性骨折の連鎖」をもたらします。
ただでさえ高齢者の活動を低下させる脆弱性骨折が繰り返し生じた場合、活動性が大幅に低下し・解除・介護が必要になる可能性が一層高まり、体の衰えも加速し、寿命が短くなってしまいます。
~原因~
実際、骨折の危険性は「加齢」「骨密度の減少」に加えて「脆弱性骨折の既往」によって上昇することがわかっています。海外の研究結果では橈骨遠位端骨折を起こした勘彌さんは橈骨遠位端骨折・脊椎圧迫骨折・大腿骨近位部骨折の骨折リスクがそれぞれ3.3倍、1.7倍、1.9倍に上昇させ、脊椎圧迫骨折の既往はそれぞれ1.4倍、4.4倍、2.3倍に上昇させます。大腿骨近位部骨折の既往は反対側の大腿骨近位部骨折の危険性を4~10倍にまで高めるといわれています。これらは、ひとたび脆弱性骨折が生じると、同じ部位の骨折だけではなく、体の他部位の骨折リスクも上昇することを意味しています。
また、骨折の数や重症度も、その後の骨折の危険性と関連します。脊椎圧迫骨折はその有無のみならず、骨折の数が増加すればするほど、その後の骨折が増えることや骨折部位のつぶれ方がひどいほど、その後の骨折の危険性が高いことも明らかなになっています。
脆弱性骨折の連鎖(骨折のドミノ現象)については十分に明らかにされていませんが 、骨折後は筋力低下をはじめとした運動機能の低下が生じるため、転倒する危険性が高いことや、全身の不動といった活動性の低下は果汁などの骨への力学的刺激を減少させて、更なる骨の脆弱化をもたらすことがあり、これらが複合的に関与して骨折連鎖の悪循環に至ってしまうと考えられています。
骨折の家族歴も重要です。両親のいずれかに大腿骨近位部骨折の既往がある場合は、大腿骨近位部骨折リスクが2.3倍高いといわれています。親子にわたり、骨密度とライフスタイルを調査した結果では、親子では骨密度が近似していると報告されており、腰椎骨密度では母から12~18歳の娘への遺伝相関があること、カルシウム摂取、身体活動においても母子間で強い相関があることから親子間委も骨折連鎖は存在します。
~診断方法~
過去に骨折をした経験があるかの把握が重要になります。受賞起点に手脆弱性骨折診断されたら、ほかの骨折歴について本人だけでなく家族にも注意深い問診を行います。脊椎圧迫骨折では全脊椎のレントゲンを確認し、ほかの部位に骨折がないか調べます。多発性椎体骨折で新しい骨折調べるにはMRIが有効です。また、大腿骨近位部骨折ではそれ以前に脊椎の圧迫骨折をきたしていることが多いため背骨の評価も重要になります。
~予防と治療~
骨折の連鎖の悪循環を断つには、脆弱性骨折が発生した患者さんに対し次の骨折予防を目的とした適切な治療を開始し、それを継続することが重要です。
薬物治療は骨折抑制効果が証明されている骨粗しょう症治療薬(骨吸収抑制薬・骨形成促進薬など)を採血や骨密度の結果をみながら投与していきます。定期的に採血や骨密度・レントゲンでの評価を行いながら、生活習慣を見直し、運動習慣を獲得、薬剤の変更を行っていきます。
骨粗鬆症による骨折は骨がもろいため後遺症が残りやすく、治療が長引くことがあります。また、生活が変化してしまい、自宅での生活が困難となることがあります。
骨折の治療だけでなく、日常生活をどう送るかなどわからないことはなんでもお答えしますので、困ったことがあれば当院にお越しください。
それではまた来週。