サイレントマニピュレーション
- 2023年4月15日
- 五十肩
サイレントマニピュレーションを聞いたことがありますか。
五十肩により動かなくなってしまった肩に麻酔をかけて動かせるようにする方法です。
五十肩の治療方法の一つで、近年超音波エコーの性能が向上したことから麻酔が容易にできるようになり普及し始めています。
今回はこの方法についてお話しします。
~五十肩~
五十肩は正式には肩関節周囲炎といいます。
肩関節には腱板と呼ばれる方を上げるための筋肉があります。
この腱板の上にはスムーズに動かせるように潤滑油の役割を果たす滑液包があります。
滑液包が何らかの刺激をうけて炎症を起こすことで五十肩を引き起こします。
炎症は数週間で落ち着きますが、滑液包や周りの組織が癒着してしまうことで肩が上がらない状態が続いてしまいます。この状態を拘縮肩と呼びます。
炎症を起こして痛みが強い時期から痛みは落ち着いたが、動かない時期に移り、半年から1年以上かけて徐々に改善していくことが多いです。
しかしながら、中には治りが悪く動きがいつまでも改善しないことがあり治療方法に苦慮することがあります。
その治療方法の一つにサイレントマニピュレーションとゆう方法があります。
~適応~
炎症が起こって安静にしていても痛い時期はまず、痛みを取る治療を優先します。三角巾などで肩を安静にし、炎症を抑える薬を使います。この時期は動かすのではなく安静にすることが大切です。
炎症が落ち着いて痛みが軽減してきたら、今度は動かしていく必要があります。リハビリテーションで可動域訓練を行ったり、肩周囲の筋肉をほぐして動かしやすい状況を作っていきます。炎症を抑え続けるために定期的にヒアルロン酸の注射も有効です。
拘縮している五十肩に対してはリハビリテーションが最も重要で基本的な治療になります。
しかしながら、リハビリテーションには根気強く継続していく必要があります。半年から1年近くに及ぶこともあり、あきらめずに継続していくことで動きを取り戻していくことができます。
それでも、「なかなか改善しない」「早く治したい」などの要望に応える方法としてサイレントマニピュレーションや手術の方法を検討します。
~サイレントマニピュレーションの方法~
腕に行く神経は首から出て色々な場所を支配しています。肩を支配している神経だけをブロックすることで痛みがない状況を作り、癒着している組織をはがします。首から出ている神経をエコーで見つけてそこにブロック注射をします。そして、痛みのない状況で肩を動かしていくことで普段では痛くてできないような施術ができます。
関節の周りの癒着が剥がれたら、その動きを維持できるようにリハビリテーションを追加していきます。
~リスク~
まずは麻酔に伴うリスクがあります。首に針を刺しますので出血や神経を痛める可能性があります。しかしながら、エコーを見ながら行いますのでこのようなリスクはほとんど起こらなくなってきています。
続いて、再発のリスクです。癒着ははがれてもほかにも問題があった場合は思うような効果が得られないことがあります。
炎症が繰り返してしまった時や周囲の腱板も痛めているときは残念ながら再発のリスクがあると報告されています。
再発や効果不良の場合は全身麻酔をかけて、関節鏡を用いた手術が必要となることがあります。
サイレントマニピュレーションは当院でも行える治療です。
拘縮肩で改善か乏しい時の選択肢としては非常に有効な方法と思います。しかしながら、基本となるリハビリテーションをおろそかにしてしまっては再発のリスクが高くなりますのでタイミングを考えて、患者さんと相談しながら治療方針を考えていきたいと思っています。
それではまた。