今回は足首の捻挫についてです。
捻挫は多くの人が経験したことがあるかと思います。
スポーツ中のケガや自転車などでの交通事故、日常生活の中で踏み外してひねってしまうこともあり、だれでも起こりえるものです。
この捻挫がクセにならないように、早く治るようにするにはどうしたらいいのか解説したいと思います。
~原因~
捻挫はバスケットボールやバレーボールなどジャンプする競技で着地に失敗してしまったり、サッカーや野球でグラウンドのくぼみに足を取られたり、キックボードや自転車による交通事故、階段を踏み外したなど様々な場面で遭遇します。
特にスポーツによるケガの中では最も多い損傷です。
ここでケガをする状況と損傷した場所の例を挙げてみたいと思います。
段差を踏み外して躓いたときは足を内側にひねってしまい、外くるぶしの辺りを損傷してしまいます。
ジャンプの着地で相手の足を踏んでしまった場合などは外側にひねってしまって内くるぶしのあたりを痛めてしまいます。
また、走っていて急に止まろうとして踏ん張り切れなかったときは足の中央辺りをひねってしまいます。
このように捻挫はひねってしまった方向で損傷する場所が変わりますので、ケガをした状況を知ることは非常に大切です。
~症状~
原因によって痛める場所は違いますが、多くは内側にひねって外くるぶしの周りが腫れます。ケガした直後は体重もかけられず、内出血があったり、腫れが強く熱感があります。
外くるぶし以外でも同じように腫れて、熱くなります。
~分類と診断~
足首には腓骨や脛骨、距骨・踵骨などの骨で成り立っています。このそれぞれの骨は靱帯でつながっており、グラグラしないようになっています。
外くるぶしを痛めた捻挫では前距腓靭帯、内くるぶしを痛めたときには三角靱帯、足の中央あたりを痛めたときは二分靱帯などが損傷します。
この靱帯損傷の具合で分類されています。
靱帯が部分的にちぎれるような損傷を1度、完全にちぎれたものを2度、複数の靱帯がちぎれたものを3度としています。
足首を痛めた場合はまず、骨をさわります。
骨を押して痛みがあるときは骨折を疑います。レントゲンで骨折があるか確認し、子供の場合は成長線が残っているので左右両方の足首のレントゲンを撮って比較します。
エコーで靱帯の損傷具合を確認し、診断することもあります。
レントゲンでは骨折がなかったとしても痛みの場所が捻挫だけでは説明つかない場所であったり、骨に痛みがあるときはMRIを取って確認することがあります。
~治療~
捻挫した時にまず必要なことはRICEと呼ばれています。
Rest:安静
Ice:冷却
Compression:圧迫
Elevation:挙上
の略です。
安静とは固定することです。固定にはギプスやサポーター、テーピングなどの方法があります。
固定力としてはギプス>サポーター>テーピングの順に強固なものになります。
固定力が高ければ高いほど安静に保てられるので、早期の治療には有効ですが、日常生活の制限も強くなるため靱帯の損傷具合をエコーや腫れの程度などから確認して、患者さんと相談の上に固定方法を決定します。
冷却とはしっかり冷やすことです。よく聞かれることは冷たいシップを貼ればいいですかと質問されることがあります。シップには冷やす効果はほとんどありませんので、氷などで冷やす方法を指導しています。具体的には10分程度しっかり冷やして、感覚がなくなる手前で離す。そのあと、20~30分程度して感覚が戻ってきたら再度冷やす。これを繰り返すことを推奨しています。
圧迫は以前は重要とされていましたが、晴れている部分に圧迫を意識しすぎても痛みが伴い、腫れが強くなってきたときに圧迫しすぎて循環損傷を起こすこともありますので現在はあまり指導しないようにしています。
挙上とはなるべく高い位置に足首を保つことです。
座っているときは足を投げ出すように高く上げ、寝ているときは足の下にまくらなど置いて高さを保ちます。
1度であれば1~2週間程度、2度であれば1か月程度、3度であれば1か月しても後遺症が残る可能性があり、この治療期間を短縮したり後遺症が残らないようにする治療が必要になります。
腫れが改善してきたら固定を緩めていき、それとともにリハビリが必要になります。
リハビリをせずにスポーツ復帰をすると捻挫を繰り返したり、痛みが残ったりすることがあるので重症度に応じて行っていきます。
リハビリテーションは3段階に分けて行います。
第1段階では捻挫をした直後で上記のRICEを基本にほかの場所の筋力が衰えないようにします。
第2段階では捻挫をして固くなった足首を柔らかくし動きを良くします。足首周囲の筋肉を鍛えて、衰えた筋肉の力を取り戻すことが必要です。
第3段階ではバランスをとる練習をします。さらに、ジョギングから始めてダッシュやストップ、サイドステップと徐々に実戦練習を行っていきます。
足首の捻挫で多くはリハビリの段階でいつ試合に出れるのか、いつからスポーツをしていいのかの悩みがあります。
どうしても痛みが取れてくると早くスポーツ復帰をしたい気持ちになると思います。
しかしながら、落ちてしまった筋力や柔軟性をそのままに今まで通りの試合や競技を行うと今後のスポーツパフォーマンスに影響してしまいます。
焦らずにリハビリを行い、必要なトレーニングを続けていくことで不自由なく競技復帰できるように寄り添って、丁寧な説明とメンタルケアが大切だと考えています。
それではまた来週。